概要
背景と目的:外骨格の歩行アシストロボットを用いた免荷トレッドミル訓練(exoskeleton-assisted BSWTT)は,特定の運動入力による反復訓練の実施が可能であるため,脳卒中後遺症の歩行機能改善の治療法として期待が寄せられている。しかしながら,exoskeleton-assisted BSWTT の“慢性期”に至った脳卒中片麻痺患者の歩行機能に及ぼす影響についてはまだ明らかにされていない。本スコーピングレビューでは,慢性期脳卒中片麻痺患者におけるexoskeleton-assisted BSWTTの有効性について調査することを目的とした。
方法と結果:本レビューでは,慢性期脳卒中片麻痺患者(発症6ヶ月以上)へのexoskeleton-assisted BSWTTの歩行機能への有効性を検証したランダム化比較試験を対象とした。PubMed, Ovid MEDLINE, Cochrane Central Register of Controlled Trials, Web of Science等から計721件の文献が収集され,最終的に11件が抽出された。全11件の文献のうち10件において,exoskeleton-assisted BSWTT群の歩行機能項目の改善への有効性が示された。うち2文献からは,機能的電気刺激 (FES)経頭蓋直流電気刺激 (tDCS)などの併用療法を用いたexoskeleton-assisted BSWTT群は,exoskeleton-assisted BSWTT単独群よりも効果が有意に高いことが示された。一方で,療法士によるtherapist assisted-BWSTT群とexoskeleton-assisted BSWTT群の有効性の比較では,有意な違いは明らかにされなかった。
結論:慢性期脳卒中患者に対するexoskeleton-assisted BSWTTは、歩行機能の改善に有効である可能性を示唆している。しかしながら、その有効性に影響するのは「アシストすること」自体の可能性があり,ロボットによるアシストの効果と限局しきれない。今後の介入プロトコルのエビデンスを強化するためには、今後さらなる検証,症例集積が必要であると考えられる。